宅地建物取引士

1.宅地建物取引士

宅地建物取引士は「宅建」や「宅建士」など略称で呼ばれることが多い資格で、宅地建物取引業法に定められた国家資格です。宅地建物取引士の試験は毎年20万人前後が受験しており、受験者数は国家資格の中では最大規模です。
重要事項の説明重要事項説明書(35条書面)への記名37条書面(実務上は不動産売買契約書の交付をもって37条書面とすることが多い)への記名3つの独占業務があり、また宅建業者(宅地・建物の売買または交換、宅地・建物の売買、交換または賃借の代理宅地・建物の売買、交換または賃借の媒介を行う業者)は従業員5名につき1名以上の宅地建物取引士を設置しなければならないことから、不動産業界において非常に需要の高い資格です。

2.難易度

★★★☆☆

3.国家資格か民間資格か

国家資格

4.受験者数

毎年20万~23万人

5.合格率

15~18%程度

6.業務の内容(独占業務の内容)

宅地建物取引士の独占業務として、前記のとおり(1)重要事項の説明(2)重要事項説明書(35条書面)への記名(3)37条書面(実務上は不動産売買契約書の交付をもって37条書面とすることが多い)への記名があります。

(1)重要事項の説明
重要事項の説明とは、不動産の買主や借主に、その売買契約や賃貸借契約における契約の重要な内容を説明することを指します。特に不動産の売買では、取引の金額が数千万円、数億円になることが多い一方で、買主は必ずしも不動産に関する知識が豊富ではないため、取引の内容について正しく知ってもらうために、この重要事項の説明を行います。
重要事項の内容としては、大きく分けて次の2つの事項になります。
①取引する不動産に関する事項
②取引条件に関する事項
が挙げられます。
①取引する不動産に関する事項に関しては、不動産の所在地・面積・種類・構造・階層、登記された権利の種類、法令に基づく制限の概要、上下水道、ガス等のインフラに関する事項、マンションであれば、区分所有建物の場合の敷地に関する権利、共用部分に関する規約等の定めなどに関する事項等となります。
②取引条件に関する事項に関しては、売買代金以外に授受される金銭に関する事項、)契約の解除に関する事項、損害賠償額の予定・違約金に関する事項、手付金等の保全措置の概要(不動産会社が自ら売主になる場合)、担保責任の履行に関する措置の概要
その土地に建物を建築する際の制限であるとか、水道、ガス、下水等の引き込みがあるか等の不動産の物回りに関する事項、手付金の額やキャンセルした場合の取り決め等の契約に関する事項等があります。

(2)重要事項説明書(35条書面)への記名
上記で説明した契約の重要な事項の説明は、内容が広範囲にわたり、口頭で説明を行うのみでは十分に理解することが難しいため、その内容を記載した書面を買主に交付しなければなりません。この説明内容を記載した書面を「重要事項説明書/35条書面)」といい、この書面への記名も宅建士の独占業務の1つとなります。

(3)37条書面への記名
上記の重要事項の説明が終わり、契約が成立した後には取引の内容を書面化することで、契約内容および買主・売主(借主・貸主)が契約を締結した事実を明確にします。
この取引の内容に関わる重要な部分が書かれた書面は、一般的には売買契約書などの各種契約書が該当しますが、宅建法上はこの書面を「37条書面」といい、この37条書面についても宅建士による記名が必要です。

7.活躍の場所

(1)不動産業界
宅地建物取引士の資格が最も生かせるのは、やはり不動産業界です。不動産業を営む場合、1つの事務所で業務に従事する者の5人に1以上の割合で選任の宅地建物取引士を設置することが義務づけられています。現状この人数要件を満たしていたとしても、宅地建物取引士の資格を有する従業員が退職や異動をすると、新たに宅地建物取引士の資格を有する者を補充する必要があります。そのため、不動産業者としては可能な限り多くの宅地建物取引士の資格を有する者を雇用しておく必要があり、その結果宅地建物取引士の有資格者には強い需要があると言えます。

(2)金融業界
金融業界では、不動産を担保にとって融資を行うことが多いため、不動産に関する知識を有する宅地建物取引士の知識を生かすことができます。宅地建物取引士の資格を有していれば、例えば担保に取る不動産が建物付きであれば、将来的に同じような建物への建て替えが可能や、今ある建物が法律に違反していないか等、更地であればそもそもその土地に建物建築が可能か、建築できるとしたらどのような建物が建築可能か等について判断が可能です。そしてこのような内容は担保にとる不動産の価値に大きく影響してきますので、それを判断できる宅地建物取引士は重宝されるのです。

(3)建設業界
建設業界でも宅地建物取引士の資格や知識が生かせます。例えば、分譲マンションは売主(マンションデベロッパー)と建設会社が別であるケースが一般的ですが、建設会社が自らマンション開発を行うこともあり、そのようなケースではマンションの販売を行うにあたり、宅地建物取引士の免許が必要となります。またハウスメーカーでは建物の建築だけでなく販売まで行うことがあるため、ここでも宅地建物取引士の免許が必要となります。その他、建設会社では顧客からの事前相談や交渉等の場面で宅地建物取引士の知識が必要となる場面があり、有資格者であれば信頼を得やすくなります。

(4)その他の業界
上記以外の業界でも、宅地建物取引士の資格を持っていると有利になるケースがあります。普段不動産を扱わない業界だからこそ、不動産の知識を有している人が少なく、都市計画法や建築基準法、民法、不動産に関する税法等に関する知識を有する宅地建物取引士が重宝されることがあるのです。例えば小売業の場合、新規出店の際には出店候補地に関して調査が必要となりますが、その調査を行ったり他社が調査した報告書を精査したりするには不動産に関する知識が必要ですが、一般的には小売業で働く人の中で不動産に詳しい人は少ないため、宅地建物取引士の資格を有し不動産に関する知識があると社内でも重宝される人材になれます。

8.独立の可否

宅建士は、独立開業も目指せる資格です。資格を取っていきなり独立は難しいですが、不動産業者で数年勤務してノウハウを取得して独立する方は多くいます。ただし宅地建物取引士が独立開業するには、宅地建物取引士の資格と、宅地建物取引業免許の取得が必要です。

9.勉強時間

300~500時間

10.勉強方法

独学も可能ですが、資格の専門学校に通って講義か、通信講座を受けるのが一般的です。専門学校の講義やテキストは合格に必要な内容が網羅されており、独学で勉強するより圧倒的に効率的です。

11.試験日

原則10月の第3日曜日