7.不動産鑑定会社
不動産鑑定会社は国家資格である不動産鑑定士の資格を有する社員が多数勤務する会社で、不動産の価格や賃料等の査定を行う会社です。不動産鑑定会社の成果物は不動産鑑定評価書や調査報告書等の名前で発行されます。一般の方には馴染みのない会社と考えられますが、公認会計士が多数勤務する監査法人や、税理士が多数勤務する税理士法人、弁護士が多数勤務する弁護士法人などを想像すると分かり易いと思います。不動産鑑定士は個人で事務所を開業しているケースが多く、複数名が在籍する法人は非常に少ないのが現状です。
上記で不動産鑑定会社が不動産の価格や賃料の査定を行うと記載しましたが、通常の不動産売買の際の売買価格や不動産を賃貸する際の賃料は、売主と買主、賃貸人(貸し手)と賃借人(借り手)が自由に決めることができるため、売買、賃貸のために不動産鑑定評価書を取得する必要はありません。しかし、株式会社が外部から不動産を取得する場合、あるいは所有不動産を売却する場合などは、その売買金額が妥当な金額であるということを株主などの利害関係者や監査法人に説明する必要があり、このような場合にその売買金額の妥当性を示す資料として鑑定評価書が利用されます。それ以外にも、ファンドが物件を取得する際、取得した後の運用期間中なども鑑定評価書の取得が求められますし、個人でも親族が経営している法人に不動産を移すような場合に税務署向けの説明資料として鑑定評価書を取得することがあります。したがって、鑑定評価書は金額や賃料の相場がわからないから取得するというよりも(そのようなケースもあります)、対外的に金額の妥当性を説明する資料として用いられるケースが大半です。
不動産鑑定会社は日本不動産研究所、大和不動産鑑定、谷澤総合鑑定書、シービーアールイー、JLL森井総合鑑定などが大手で、特に前から3社が鑑定業界の大手3社と呼ばれています。
大手鑑定会社には、前記のとおりファンドが取得する際の評価依頼や運用期間中の評価依頼が多数集まってくるため、例えばオフィスビル、商業ビル、ホテル、物流施設などの賃料水準や取引される際の利回り感(キャップレート(Cap Rate)、略してキャップ感)、土地値(地価水準)の相場感などの情報も付随して集まっており、そのため不動産売買を行おうとする法人は相場感把握のため、大手鑑定会社に事前に相談するようなことが多くあります。
なお、不動産鑑定士の資格は不動産関連資格の最高峰と呼ばれており、弁護士、公認会計士、不動産鑑定士は三大国家資格と呼ばれます。不動産鑑定士は宅建の資格を取得した後に目指す方が多い資格で、資格を有する方は不動産鑑定会社に勤務するのはもちろん、その知識を生かしファンドや信託銀行、監査法人などに勤務する人も多くいます。私も不動産鑑定士の資格を有していますが、現在は鑑定評価書を書く機会は少なく、資格が生かせているとは言い難いですが、鑑定評価に関する知識は色々な場面で役に立っており、転職する場合でも非常に有利な資格だと感じています。