6.信託銀行
信託銀行は前記5.金融機関の中の1つですが、金融機関の中でも他の銀行とは異なり、「銀行業務」に加え「信託業務」を営むことができるため、金融機関とは別に項目を設けました。
信託とは、委託者(財産を託す人)が受託者(財産を託される人)に、信託契約によって自分の財産を移転し、受託者は委託者の指定した受益者(信託された財産から生じる利益を受ける人)のために、その財産の管理、処分などを行うことをいいます。この信託は、特に不動産の証券化(流動化)の場面で頻繁に利用されており、その際受託者となるのが信託銀行です。
ではなぜ、不動産の証券化(流動化)において、信託が利用されるのかという点ですが、これには以下のメリットがあるためです。
(1)節税効果
まず1点目として、現物の不動産で売買するケースに比べ、一旦信託銀行に不動産を信託し、信託銀行から発行された不動産信託受益権を売買するケースの方が以下の表のように①不動産取得税、②登録免許税、③印紙税の額が抑えられる点が挙げられます。なお、下記表の率の掛目となる不動産の価格は、市町村で管理している固定資産課税台帳の登録されている価格で、毎年市町村から送付される固定資産税の納税通知書に記載されています。
現物不動産 | 不動産信託受益権 | |
不動産取得税 | 土地、建物[住宅]3%(※1)、建物[住宅以外]4% | 0円 |
登録免許税 | 土地2%、建物2%(※2) | 不動産1件につき1,000円 |
印紙税 | 契約金額による | 200円 |
※1 土地および建物〔住宅〕は令和9年3月31日までに取得した場合の軽減税率、さらに土地は課税標準の2分の1に軽減
※2 土地は令和8年3月31日までに所有権移転登記をした場合1.5%、建物は住宅用家屋(自己の居住の用に供する場合)は軽減あり。
※3 令和9年3月31日までの軽減措置。軽減措置後は4%。
例えば10億円のオフィスビルを売買する場合、現物不動産ですと不動産取得税が4,000万円(住宅以外)、登録免許税2,000万円、印紙税16万円(令和9年3月31日までの軽減措置)で合計6,016万円となります。一方不動産信託受益権での売買ですと、不動産取得税が0円、登録免許税が不動産×1,000円、印紙税200円で合計数千円で済みます。不動産の証券化(流動化)では金額の大きな物件の売買が多いため、この不動産流通課税の節税は非常にインパクトがあります。これが信託の仕組みが利用されるメリットの1つとなります。
(2)デューデリジェンス効果
デューデリジェンスとは不動産の内容に関する詳細な調査を指し、①物的側面、②法的側面、③経済的側面からの調査が行われます。信託銀行が不動産の受託を行う際には、対象不動産についてデューデリジェンスが行われ、受託可能の判断された物件のみが信託受益権化されますので、不動産信託受益権化されているということは信託銀行のデューデリジェンスを経た物件であると判断され、一定の安心感が得られます。これも信託の仕組みが利用されるメリットの1つとなります。